29Apr
最初の子どもを妊娠して、7ヶ月目頃だったと思います。
検診のために通っていた病院の先生に、産後の赤ちゃんの栄養方法についてお願いしたことが2つありました。
1つ目は、
「人工乳(粉ミルク)を一切やらないでほしいこと。」
2つ目は、
「糖水を一切やらないでほしいこと。」
1つ目については、了承していただけたので、ほっとしたのですが、
2つ目については、了承していただけませんでした。
「産後すぐは、母乳がなかなか出ないので、
赤ちゃんの水分と栄養低下を防ぐために
うすいブドウ糖水を飲ませるようにしています。」
というのが、先生の言い分でした。
でも私は、ここであきらめるわけにはいかないと思いました。
なぜなら、産まれたばかりの赤ちゃんに、
おっぱいがなかなか出ないからといって糖水をひんぱんに与えてしまうと、
嘔吐することがあるからです。
それに、何よりも困るのは、
「赤ちゃんに初乳を飲ませる機会を失くしてしまう。」
ことになるからです。
「初乳」とは、出産してから2~3日間に出るおっぱいのことで、
黄色みを帯びて、ねっとりしています。
では私が、どうして「初乳」を飲ませることにこだわるのかといえば、
この初乳の中に生きた細胞が含まれ、それらが赤ちゃんの体を
さまざまな病原菌や有害物質から守ってくれるからです。
赤ちゃんは、お母さんのお腹にいる時に、
胎盤を通して、免疫抗体をもらいます。
これを、「免疫グロブリン」といいます。
今までは、赤ちゃんを病気から守るのは、
「免疫グロブリン」だけだと考えられていました。
ところが1970年代になって、「初乳」が注目されることにより、
初乳には、「免疫グロブリン」とは別の働きを持つ
免疫抗体が存在することがわかってきたのです。
これを、「分泌型免疫グロブリン」といいます。
「免疫グロブリン」が、赤ちゃんの血液に入って活躍するのに対し、
「分泌型免疫グロブリン」は、赤ちゃんの口から入り、
口の中や、中耳、気管支、胃や腸などの粘膜の表面にまで広がっていくことにより
細菌やウィルス、アレルギーの原因となるたんぱく質の侵入を防いでくれます。
また、赤ちゃんが風邪をひくなどして、新しい細菌にさらされると、
その細菌に対する抗体を作る働きもあります。
この「分泌型免疫グロブリン」ですが、分娩当日の初乳には、
100グラムあたり2~4グラム含まれているのですが、
分娩後2~4日では、10分の1以下に減ってしまいます。
さらに付け加えると、分娩当日でも、抗体濃度が最も高いのは
出産後1時間だといわれているのです。
なので、生まれてすぐに、赤ちゃんに初乳を飲ませることが
いかに大切なのかがわかりますね。
「免疫グロブリン」は、赤ちゃんが生後6ヶ月をすぎる頃には
なくなってしまうため、この頃からいろんな病気にかかりやすくなりますが、
初乳を飲ませ、ひきつづき母乳育児をしていれば、
「分泌型免疫グロブリン」が、赤ちゃんを守り続けてくれるのです。
だから、母乳育ちの赤ちゃんは、比較的丈夫で
病気にかかりにくく治りも早いのですね。
それで、最初の病院の話に戻りますが、
「生まれてくる子に、何とか初乳を飲ませて
健康をプレゼントしてやりたい。」
そう思った私は、いったん断られたものの、
ここで諦めるわけにはいかないと思ったので、
先生に何とか2つ目のお願いを聞いていただけるよう、
とにかく食い下がることにしました。
それで、あれこれやりとりをしているうちに、
「生まれたての赤ちゃんに、母乳が出るまでの間
本当に何か他のものを足さないといけないのだとしたら、
人類はとっくに滅んでたんじゃないですか?」
なんて言ってしまったものだから、
先生はすっかり怒ってしまいました。
頭に血を上らせながら、
医療の発達してなかった頃は、乳幼児の死亡率が高かった云々
と、まくしたてる先生の様子を見ながら、
「これは、病院を変えた方がいいかも・・・」
なんてことを、
私はぼんやり考えていたのでした。
■記事提供元サイト:ゆーみんのぐうたら育児日記