「Blogパラダイス」、通称「ブロパラ」は、ブロガーを応援する投稿サイトです。

menu

Blogパラダイス

クレイグ・ライスの『スイートホーム殺人事件』はどこまでも幸せな家族の物語


 
クレイグ・ライスの『スイートホーム殺人事件』を読みました。クレイグ・ライスはアメリカの女流ミステリー作家。この作品は1944年発表のコージー・ミステリです。作者自身と子どもたちをモデルにした小説だと言われています。
 

『スイートホーム殺人事件』とは?

物語は、ごくふつうの一家に起きた殺人事件とその解決に至るまでを、ユーモラスに描いたもの。
 
登場人物は母親と3人の子どもたち。母親は、夫と死別してから、1人で子どもを育てているシングルマザー。職業はミステリ作家。あまり売れない作家で、いくつかのペンネームをもち、ひたすら小説を書くことで、なんとか一家を支えています。
 
子どもたちを愛する、よい母親ですが、何しろ毎日忙しく、日がな一日ずっとタイプライターに向かいっぱなし。
 
母親に替わって家事全般をとりしきっている14歳の長女は、ややおっとりとしたタイプ。12歳の次女は機転がきいて芝居がうまい、如才ないタイプ。末っ子の10歳の男の子は、わんぱくだけど、お小遣いをしっかりためており、姉2人にお金を貸しています。
 
個性豊かな子どもたちですが、3人ともとても母親思いなのは一緒。3人で一致団結して、隣の家で起きた殺人事件を解決しようとします。
 
「もしこの事件を見事に解決したら、母親の本の宣伝になる。どんどん売れて、お金も入れば、もうあんなに忙しく働く必要がなくなるだろう。」 そんな気持ちから、3人で捜査に乗り出すのです。
 
何と言っても、殺人事件の捜査のやり方は、母親の本を読んでよく知っています。とはいえ、そこは子どものやること。警察の捜査のかく乱、証拠の捏造(ねつぞう)など、やりたいほうだい。さらに、独身の刑事と母親を結びつけようとまでします。
 
殺人は出てくるものの、終始家族の仲のよさが感じられる、とてもほのぼのとした小説です。家庭が舞台のせいか、古臭い感じもしません。
 
3人は、皿洗いやゴミ出しを順番に引受け、けなげに家事をしています。一家の食卓の上には、ローストビーフやレモンメレンゲパイ、コーンマフィンなどおいしそうなものが並びます。
 
クレイブ・ライスの持ち味である粋なセンスも感じられ、今読んでも充分楽しめる幸せな小説なのです。

クレイグ・ライスって誰?

クレイグ・ライス(1908年~1957年)はアメリカのイリノイ州生まれ。10代後半から、ジャーナリストとして活躍。20代はじめには、すでにラジオの放送作家、脚本家、プロデューサーの仕事をしていました。
 
ミステリ作家としてのデビューは1939年で30歳になってから。都会的で、ユーモアのある、弁護士マローンシリーズが代表作です。
 
人気の頂点だったころは、アガサ・クリスティと本のセールスを競っていて、雑誌TIME(タイム)の表紙にもなったほど。
 
ライスは、子どものころ、あまり幸せではありませんでした。生まれたとき、画家志望の父親は、ヨーロッパにいて、彫刻家志望の母親も、すぐに父親のもとに去ってしまったので、伯母(母親の異母姉妹)夫婦に引き取られました。
 
いったん母親が戻ってきて、3年一緒に暮したものの、また母親に捨てられる形になり、11歳のとき、再度、母親が同居しようとしたときは、うんざりして拒絶したそうです。
 
そんな幼年時代を送ったせいか、ライス自身も、子どもが3人いましたが、子育ては半ば放棄していました。結婚と離婚を繰り返し、家庭のことより、仕事と飲酒、男性とのつきあいに身をやつしていたのです。
 
ライスは人間関係や仕事のストレスで、アルコール依存症になり、それが原因で49歳の若さで亡くなっています。
 
この経歴を知ったとき、私はびっくりしました。小説の中の、家族愛にあふれるほのぼのとした世界とは正反対なのですから。ですが、そんな人生だったからこそ、ここまで幸せな小説が書けたのかもしれません。
 
影を知っているからこそ、光が見えるのです。
 
以前、『メアリー・ポピンズ』の作者のトラヴァースの伝記の紹介に、「すばらしい児童小説を書く作家の子ども時代は、たいてい不幸なものである」というくだりがありました。
 
このように、コンプレックスや、不幸な境遇が生み出す負のパワーが、すばらしい創作を生み出す例は珍しくありませんね。
 
 
クレイグ・ライスの作品は、長らく北米ではほとんど絶版になっていましたが、最近、キンドル版で少しずつ読めるようになってきました。日本では以前から人気があり、たくさん翻訳されています。
 
彼女が身を削って生み出してくれた傑作の数々を、私はこれからも愛読するつもりです。
 

■記事提供元サイト:筆子ジャーナル
 

応援、ありがとう♪

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 丁寧な暮らしへ

アーカイブ