21Mar
アメリカ映画「ヒッチコック」が4月5日に全国で公開予定です。
サスペンスの巨匠、ヒッチコックをテーマにした、サーシャ・ガヴァシ監督の2012年の作品です。
ヒッチコック映画が大好きな私。日本の皆様より一足先にこの映画を見ました。
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サスペンスやミステリー映画がお好きなら、ヒッチコック監督のことはご存知でしょう。イギリス出身で1939年以降はハリウッドで活躍した映画監督です。
1940年代、50年代に「鳥」「裏窓」「北北西に進路を取れ」など数々の傑作を発表しています。
この映画は彼の作品の中でも特に有名な1960年の「サイコ」というスリラー映画の制作舞台裏を描いています。特に監督と妻のアルマの私生活に焦点があたっています。
今見ても面白い「サイコ」ですが、当時のハリウッドにとっては斬新すぎる1本でした。新しすぎるゆえに、資金集めから制作、配給、公開まで監督は大変苦労したようです。
妻のアルマは自身もシナリオライター、助監督、編集者です。ヒッチコックとは彼が1926年に「下宿人」を作っている現場で知り合い結婚しました。
ずっとヒッチコックの映画製作に協力し、公私ともに監督を支えたアルマですが、その存在はマニアなヒッチコックファン以外にはあまり知られていませんでした。
多少事実と違うところはあるようですが、この映画はアルマのことをひろく世に知らしめることになりました。
監督がブロンドの美人女優に妄想を抱いていたという話は有名で、映画にもそのことが出てきます。
そして、ヒッチコックも奥さんがほかの男性に心を奪われているのではないかと疑います。
二人ともお互いに疑心暗鬼にとらわれ嫉妬に苦しみます。結婚後30年もたっているのに、ですよ。深く愛しあっているゆえでしょうか?
そんな二人が、悩みながら、いかに「サイコ」という傑作映画を作りだしていくのか?
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見終わったあと、もっと映画制作の秘密を見たかったと思うヒッチコックファンもいらっしゃるかもしれません。でも、配給会社や、エージェント、映倫とのヒッチコックのやりとりや、撮影や編集など現場の映像もふんだんにあり、映画ファンなら楽しめることうけあいです。
1959年の設定なので、ヒッチコック夫妻の住むすてきな邸宅の内装や庭、プール、女優さんたちのファッションなどレトロな世界も見どころです。
主役のアンソニー・ホプキンスがヒッチコックとそっくりにしゃべっており力演。この監督のイメージが世間にしっかり根付いているため、演じるのは難しかったはずですが、ユーモアを交えてユニークなヒッチコック像を作っていました。
ヒッチファンでなければ存在を知らない妻のアルマ役のヘレン・ミレンは生き生きと演じていて、存在感が感じられました。
個人的に、少ししか出てこないのですが、実際の「サイコ」の主人公のアンソニー・パーキンスを演じたジェームス・ダーシーがノーマン・ベイツ(主人公の役名)にあまりに似ているので驚きました。
語学という観点からは、ヒッチコックのバリバリのイギリス英語と、ハリウッドの人間のアメリカ英語の両方を聞くことができます。また、ヒッチコックのちょっとひねくれたブリティッシュ・ユーモアのある台詞がおもしろく、かつ勉強になります。
ヒッチコック映画のパロディのようなシーンも多く、ファンはもちろんのこと、監督を知らない方にも楽しめる上質のエンターテイメントになっています。
「ヒッチコック」は映画好きなあなたにこの春おすすめの1本です。
■記事提供元サイト: フランス語の扉を開こう~ペンギンと